側弯の手術を終えて


            田中正孝(父親:静岡県浜松市)

 この7月4日に長女麻帆は、名古屋大学附属病院で脊柱側弯の手術を受け、無事に
終了する事が出来ました。9月現在、リハビリ中です。
 レット児の側弯手術は国内では事例が少ないと思われます、同じような症例のお子
様の一助になりましたらと思い、簡単に説明させていただきます。


*手術を決心した理由
 角度の進行に伴って歩行の困難さが増してきたこと。
 100度を越してから腰骨が肋骨内側に入り込むようになり、咳をした時に骨と骨
 が擦れる可能注が出てきたこと。しばしば激痛が伴います。

*手術の内容
 腹部より切開して肋骨を1本はずして、図のように支柱と1つ1つの脊柱をボルト
 でねじ込みます。これらはチタン合金で造られていて、一生使用可能だそうです。
 手術時間は麻酔等の準備時間も含めて9時間かかりました。術中1つの骨を砕いて
 しまったので、より多くの時間がかかったとのことでした。
 抗ケイレン剤のデパケンの影響で骨が脆くなっているとのことでした。
 術後角度は105度から42度に改善されました。

*術後
 8週間ギプスで固定したままベッドで回復を待ちました。
 それから、直立することから始めて歩行の練習に入っています。このリハビリを4
 週間ほどしてから退院となる予定です。

 詳細につきましては、事務局(TEL043-238-8898)まで。


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側弯と手術についての解説

レット症候群における整形外科上の諸問題

       International Rett Syndrome Association

                         著者:Paul D. Sponseller, M.D.
                     ジョンズ・ホプキンス病院整形外科助教授
                     翻訳:田中 正孝
                     日本レット症候群協会翻訳事業部

*背骨の曲り (Scoliosis)

*脊椎側弯とは?
 背骨はブロックで作られた円柱のように上下に重ねられた脊椎骨によって出来てい
ます。側弯とは、普通は直線である脊柱が螺旋階段の形状で脊椎骨が繋がっているこ
とをいいます(図1)。

*原因は?
 背骨の両側には筋肉があります。側弯の主な原因は、この筋肉の異常もしくはアン
バランスにあると思われます。レット患者には、一般的にこの傾向があらわれます。
側弯はまた脳性麻痺・脊椎披裂・脊髄損傷等の患者にも同じ理由で起こります。
左右のそれぞれの筋肉の張力の違いが背骨の曲りを作ります(図2)。この筋異常は
脳よりの信号の異常によって起こると思われます。

*いつ始まるのか?
 普通9〜12歳に各々の成長に応じて曲りが始まります。まれに幼年期にも起こり
ますが、その場合急に悪くはなりません。レット患者は毎年側弯のチェックを受ける
べきです。X線でなくても発見できます。

*レット症児における側弯症の割合は?
 人数の多い3つのグループを調査しました。それによると 3/4の確率で側弯がみら
れます。小さな曲りの患者は少数派です。まれに曲りの止まった子もいます。側弯症
はレットの謎の一つですが、研究が進むにつれてその原因もわかってくるでしょう。

*進行度合いは?
 曲りの進行度は各々で異なります。図3を見て下さい。各患者を線で結んでいます。
横軸が年齢で、縦軸が角度を表わします。横軸と平行な線は進行のないことを示して
います。急角度の患者もいれば、そうでない人もいます。全ての患者を曲り始めから
調査していないので完璧な調査とはなっていませんが、一般的に大人に近付くと曲り
が増大することがわかります。

*側弯による影響は?
 1.座ることが難しくなります。(バランスがとりにくくなる)
 2.胸部のカーブによる肺への圧迫。70度を越えると重大な影響を及ぼします。
この角度を越えないように努めて下さい。

*側弯は防げるか?
 残念ながらノーです。しかし、スタートからの処置方法はあります。

*側弯の処置は?
 成長期の軽度の患者にはブレース(コルセット)を使用しますが、ティーンエージ
ャーもしくはそれに近い患者で、大きな角度の人は外科手術をします。

*発見の仕方は?
 図4を見て下さい。後ろから見ればよくわかります。患者が直立できるならば、前
傾させて発見できます(B)。直立できなくても、座らせて上方より見下ろせばわか
ります。正常の身体であれば、背中の真中より左右の肋骨と筋肉は同じ形に見えます。
片方が盛り上がっているならば、X線の検査を受けて下さい。

*X線検査はどんな間隔で?
 曲りが見つかって、ゆっくりとした進行ならば年に1回、進行が速くなったら6カ
月に1回受けて下さい。

*ブレースはいつ装着するのか?
 子供が成長中で20度〜25度を越えたら着けて下さい。45度を越えるとその効
果は見込めません。

*どんな形のブレースか?
 側弯を矯正するためには適当な部位にゆるやかな圧力をかけることが必要です。そ
のためにブレースは薄いプラスチックをジャケットの形に型取りをして、パットで補
正して作られます(図5)。服の下に装着します。体に傷をつけることはありません
が、患者がまだ年少だったり、患者の体がブレースより大きくなったりすると、強く
あたるところが炎症を起こします。ドクターの指示により、1日に18〜23時間装
着して下さい。

*ブレースの効果は?
 曲りの増え方を遅らせることが目的です。戻してまっすぐには出来ません。
 ほとんどの患者さんは角度が増加するわけですが、この増加率を小さくするわけで
す。患者自身の成長が止まるまで、また40度〜50度より少ない角度までブレース
で済ませることが出来ます。そして成長の終了期近くまで外科手術を遅らせることが
出来ます。
 中にはブレースが効かず、曲りが大きくなり過ぎて外科手術を受ける必要のある患
者も出てきます。

*外科手術の決断時期は?
 ケースバイケースです。しかし、40度〜50度までいってしまうと、成長が止ま
っても曲りの角度は進むようです。座りにくくなってから、また肺の問題が起きてか
らでは遅すぎます。多くの場合、40度〜50度が外科手術を受ける目安となります。

*手術による日々の生活の改善点は?
 術後、背骨が矯正されるとお座りがしっかりと出来ます。自分の力を支えるために
的確に手を使えるようになります。肺への圧迫も防げます。

*側弯の手術とは?
 背骨をステンレススチールの棒で固定して補正します。骨のつなぎはこのスチール
棒にセットされてしっかりとつながれます。これにより、これ以上の曲りの悪化を防
ぎます(図6)。スチール棒は一部骨の下を通ります。そしてこのスチール棒は身体
に入ったままになります。この棒は患者が極度にやせない限り、身体に害を与えませ
ん。

*どのくらい矯正できるか?
 もともとの曲りの角度・年齢・背骨の硬さによって決まります。一般的には40〜
60%の改善が望めます。またこの範囲に留めます。基本的には、手術することによ
って側弯の進行をなくすわけですから、あまり多くの矯正を期待すると脊髄を伸ばし
過ぎる危険を犯します。ですから外科のドクターは全く元どおりにしませんし、その
必要性も認めません。

*発作を持つ子の麻酔への対応は?
 麻酔中は発作を抑制できますが、術後に問題が起きます。そこで手術前に可能な限
り発作コントロールをしっかり行って下さい。抗てんかん薬の血中濃度を術前にしっ
かりと範囲内に抑えて下さい。加えて術後直ちに適切な投薬をして下さい。またしっ
かりと栄養も摂ってください。

*回復期
 手術当日、患者は一日中ウトウトしています。3〜4日後になると気分もよくなり
食欲も出てきます。輸血も必要となるでしょう。これには事前の本人による献血、そ
して親族によるものでまかなえます。入院は6〜10日です。

 余病併発の可能性としては、1)感染症(1〜2%のリスク);最初の2週間ではっき
りとします。感染を防ぐために洗浄が必要です。2)ステンレス棒の移動(5%位のリス
ク);これには再手術が必要です。3)神経へのダメージ;これには大きな危険があります
が、危険率は 0.1〜0.2%です。神経を傷つけると下半身が麻痺したり、片足または両
足が弱くなったりしますが一部は回復します。4)偽関節(Pseudarthrosis);脊椎骨との
接続ミス。再手術が必要です。約1%の確率で起こります。

*何日で立って体重をかけることができるか?
 骨の質とステンレス棒のサポートする力によります。術後4〜6日経てば充分に立つ
ことができます。何人かはブレースかギプスが必要で、この時期に使用します。6〜8
週で元のレベルに戻ります。約6か月はジャンプしたりとかの過激な運動は慎んで下さい。


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